
今週のお題「最近やっと〇〇しました」。今回は、「最近やっと『私のトナカイちゃん』を観てみました」でエントリーしてみます。
「見なきゃ良かった。。。」ここまで、そう感じた作品は初めてかもしれません。
Netflix話題になっていたのは知っていたけど、なんだか可愛らしいタイトルとその反面、「描写がエグ過ぎる」とのレビューになかなか重い腰が上がらず。。
実際にあった事件や、犯罪心理の描写が丁寧な作品はすごく好みなので、観ようと思いながらも、これは手が伸びなかった……その予感は的中していました...。
女性ストーカーを描いたドラマで、作品自体はエミー賞を6部門も受賞するほどの良作。ですが、心理的にかなりえぐってきます。
サイコパス、というよりむしろソシオパスにも見えるストーカー、あなたは何を感じますか?
過去に性被害や性的トラウマ、セクハラ被害などを受けたことがある方は鑑賞注意です。
あらかじめ、内容を理解しておくことをおススメします。
『私のトナカイちゃん』の作品情報

参照:(C)2022 Netflix, Inc.
『私のトナカイちゃん』は、2024年に公開されたNetflixリミテッドシリーズのドラマで全7話。1話30分くらいなので、サクッと観れるかと思いきや、そんな優しいドラマではありません💦
製作総指揮をとったのは、リチャード・ガッド。コメディアンである彼の、自身のストーカー体験を基にした一人芝居が話題になり、Netflixオリジナルドラマとして製作された実話ドラマ。
米国のレビューサイトRotten Tomatos(ロッテントマト)では100%という高い評価を獲得。Netflixオリジナル作品がここまで高い評価を得るのは稀。
エミー賞リミテッドシリーズ部門でも、主要3部門を受賞、さらに脚本賞・キャスティング賞・編集賞受賞を含め6冠を達成しました。
▼どこで観れる?▼
『私のトナカイちゃん』の大まかなあらすじ

参照:(C)2022 Netflix, Inc.
主人公であるドニーは「売れない芸人」兼「バーテンダー」。ある日、バーを訪れたマーサという女性に同情心のようなものを抱き、紅茶を一杯奢ってしまう。
口を開けば、次から次へと嘘をつくマーサに何故か興味を持つドニーは、明らかにクセが強そうなマーサに曖昧な態度を取り続けてしまう。
マーサは、ドニーを ”Baby reindeer(私のトナカイちゃん)” と呼ぶようになり、やがて大量のメールが届くようになる。ストーカー行為の始まりだ。質の悪い同僚も、面白がって卑猥なメールを送ったりしているうちに、いよいよマーサの勘違いと妄想は止められなくなっていく…。
なぜ?ドニーは無視できなかったのか。なぜ?ドニーに懐いたのか?
その理由は、第4話以降はっきりとする___ここからドニーに抱いていた違和感の正体が明らかになるのだが、それはあまりにも重いトラウマが関係していた。
ドニーとマーサはどうなっていくのか?二人の関係は____?
要注意!第4話がこのドラマの真髄

参照:(C)2022 Netflix, Inc.
正直な所、第3話までは、
「思ったよりシリアスなストーカー問題じゃないな、、」
「確かに奇妙なお客さんだけど、距離を取ればいいだけだし、力の差はあるのだから。」
と、ちょっと肩透かしを食らったような気分で鑑賞。なるほど、ブラックコメディーって書いてたもんな。なんてコメディ要素を楽しんでいたのですが、、、このドラマの肝はここからでした。
時は20代のドニー。コメディアンとして何とか売れたい彼は、ロンドンに上京後小さなバーでショーを開きます。しかし、全く面白くない彼の芸は受け入れてもらえず。。
そんな時に、流れで入った会員制のバーで有名なコメディーショーの脚本家と出会います。
彼の助言もあって、ドニーのショーは大盛況!次第に彼となら、有名コメディアンも夢じゃない!と期待を抱くようになるドニー。
しかし、彼はそこから*グルーミングの手口を使い、ドラッグを使ってドニーをレイプするのです。最初は、少しハイになる程度。次は少し強く。嫌なら止めようと言いながらも、さらに強く。
本来は動物が行う毛繕い。性的グルーミングは主に子供に行われることが多く、まず警戒心を解くために低姿勢で近づき、慣れてきたころを見計らって性的搾取に及ぶこと。
海外では特に、女性や子供だけでなく男性もこの被害に遭うケースが多い。そこには密接にドラッグが関係してくることも忘れてはならない。
ここのシーンは、実際に経験したのが良く分かるほど描写がリアルで、拒絶している心と、受け入れてしまった体を自身で受け入れる葛藤、そこから起きる性的志向の揺れ、自傷行為としか見えない、性別を問わない性行為...と、かなりショッキングな内容です。
___楽しい話ではありませんが、実は私自身も幼稚園の時と、小学1年生の時の計2回。レイプではありませんが、性被害を受けたことがある性被害者です。
そのうちの一人は、後に障害があったことが分かり、「じゃあしょうがなかったのか。」と飲み込むこともありました。
もう1人の方は、同級生だったのですが、転校していた後忘れていたのに、なんと高校で同じクラスにいて、心臓がバクバクいうほど驚いたのを覚えています。(もちろん3年間、一度も目が合いませんでしたが。)
人間の脳は、ショックなことがあると「それを忘れるよう意識下に閉じ込める」傾向があります。
わたしも、これら2回の被害の事は忘れていたのですが、このシーンを観た時に「観れない、観たくない、苦しい」という感情が沸き上がり、フラッシュバックまでいかなくとも、ひどく苦しく悲しい感情が出てしまったので、過去にそういった経験がある方は、注意してご覧ください。
知らず知らずのうちに、記憶から抹殺し閉じ込めているケースもあるので、苦しいと思ったら観るのを一旦やめて飛ばしてくださいね。
ここでの、ドニーが必死に自分を傷めつけながら「あれは大したことじゃない」と自分に言い聞かせている描写があまりにも痛々しく、性暴力の残すものはこんなにも根深いのだと実感させられます。
ついていけば成功するかも。ドラッグでハイになるくらいなんて事ないだろう。という甘さや楽な方へ逃げる彼の本質が呼び込んだ、危機管理能力の無さが呼んだ事件ですから。
脳裏をよぎる「ジャニーズ性被害問題」
このシーンを見て、特に思い出したのが最近になってやっと認められた「*ジャニー喜多川性加害問題」。
この問題は、かなり前から争われていたものの、圧倒的な権力を持つジャニーズ事務所のもみ消しにより、長年表に出てこなかった事件。
子供の頃、母から、「これ内容凄いから読んでみて。」と渡された本、それが『元フォーリーブスの北公次による暴露本』だった。(今思うと、子供に読ませる本じゃない)
1988年に発売された本書ですが、当時はマスコミはこぞって無視。どこも取り扱わず、35年経ってようやく、認められました。
この本を読むと分かるのですが、ジャニーズ入団後、どのように性的に毎晩もてあそばれるのか、どうしたらデビューまですんなりいくのか、「やめろ!」と反発した子がどうなっていったのか。全て事細かに書かれています。
合宿所での夜、何が行われていたのか。ジャニーさんにどうやって弄ばれたのか。非常に読んでいて気分の悪い話ですが、グルーミングの過程があまりにもリアルで、拒否できなくなる心理も読み取れます。
中には、このドラマのドニーのように、自身の性的志向がわからなくなったり、自分がされたことを恋愛感情と勘違いしたり、女性には体が反応しなくなったり。そういうトラウマを抱えた子もいるかもしれません。
(この著者である北公次は、覚醒剤常用し63歳という若さで、肝臓がんで死去。)
心に深い爪痕を残す性被害。腹立たしいのは、加害側はやりたいようにやっているだけなので、何の心理的苦痛もない。
された側のみが自分に起きる変化や心理的歪み、自己嫌悪に苛まれるなんて、あまりにもおかしな話じゃありませんか。
最近は、教師が集まって「集団盗撮グループ」があったことが発覚しましたね。まことに信じがたい事件ですが、何故それは起こったのか。を深く掘り下げてほしいと願いますね。
『私のトナカイちゃん』を観た感想/レビュー

参照:(C)2022 Netflix, Inc.
結局、最後までこのドラマを観て感じたのは、本当の被害者はマーサなのでは...?とすら思っちゃう。
全て観るまでは、「ストーカーに遭ったコメディアンの話」だったけれど、観た後は「性暴力による自己喪失と心の分裂を起こしたコメディアンが、自らマーサを引き寄せ自分の分裂した心を取り戻す話」に見えたのは私だけでしょうか?
結局、最後まで「マーサに被害を受けた。」とは思っていない様に感じるのです。
もちろん、マーサ本人も大分精神状態は正常ではないように見えます。
口からは次から次へと出てくるウソ。虚言。そして、急に高らかに笑う場違いな笑い声。そうかと思えば、急にキレちゃうあたりも。
まるで、境界性パーソナリティ障害や、双極性障害を持つ人の様にもみえますので、いわゆる「精神が健康な人」ではないのだけれど…私にはドニーがちょっかいを出したように見えるのです。
きっと、「自分というものを失った苦しみ」を救ってほしいと、救われたいと思っていたところに現れたマーサ。そのマーサに自分と似た孤独感を見出し、マーサのベクトルを自分に向けさせたドニー。
無視をすればいいだけなのに、執拗にマーサの事を知ろうとするあたりは、「なんだ。こいつも俺と同じじゃないか。どん底にいるじゃないか。」と、「自分と同じ不幸な人間なんだ」と思いたがっているようにも見えます。
(同情したと言っているが、ただの同情なら調べ上げたりしない。明らかな執着が見える。)
一方、マーサの方はきっと、過去にもストーカー事件を起こしている様なので、紅茶を奢ってくれて、望む会話ができた相手のドニーにロックオンしたのでしょうね。
粘着されたのではなく、粘着させた様に見える一連のマーサとの会話は、まるで「本当の自分自身を見てもらいたがっている」ように感じます。
以前読んで、衝撃を受けた心理描写がすごい漫画『新のぞき屋
』でもあったのですが、
「人は、見られることで存在すると実感できる。必要とされたり、価値を見出してもらったり。でもそれが虚構の自分である時、現実の方を覗かれたいという欲望が人にはある。」
という感じの話があったのですが、これぞまさしく!と思いました。
自分というものがわからなくなって、性暴行から心を一度殺して、忘れようとすればするほど自傷行為に走り、自分の価値が分からなくなってくる。
この恐怖から逃れるために、ドラッグやお酒・セックスに逃げる人が多いので簡単に依存してしまう。
ドニーの場合は、マーサのストーキングで「見られる・覗かれる」ことによって、価値が生まれたのでしょう、ドラッグやお酒・セックス相手は中まで覗いてくれませんから。
こういった心理状態の人って、実は大なり小なり意外と身の回りにいるんですよね。。
「本当は嫌だったけど断れないし、なんなら嫌と思わなくなった」
っていう状態。
共依存は、支配と被支配の関係でしかないのですが、そこから目を背ける。まるで自分で自分を心理的にレイプしているかのように。
しかし、誰も見やしなかったドニーの心を見ようとしたのは、皮肉にもマーサとトランス女性でセラピストの彼女テリーだけでしたね。
最後に、家族にカミングアウトしたことで、閉じ込めた感情を癒すことはできたのでしょうか。
恐ろしい事に、現実ではこのマーサのモデルになった女性が「Netflixを名誉棄損で訴える」と言い出したらしい。
まだ、2人の関係は続いていくのか。終わりにしたいかそうでないかは、彼にしか分かりませんが。
パラフィリア(性的倒錯)は他人ごとではない
これを観てゾッとするのが、やはりグルーミングの怖さ。性被害者から性加害者へ。というのも、よくある話なのです。
今回のドニーの件では、明確に*パラフィリアの傾向は出ていないようですが、ジャニーズの件なんかだと、パラフィリアのジャニー喜多川によって、新たなパラフィリアが生まれている可能性があるという事。
性的興奮を伴う極端な空想や行動が、無生物、小児、または同意のない成人を対象として、あるいは自分自身またはパートナーに苦痛や屈辱を与える性質をもって、常習的に見られる状態。
パラフィリア症とは、パラフィリアのうち、本人に苦痛を与えているか、本人の日常生活に支障をきたしているものをいいます。
最も一般的なパラフィリア症は以下。
- 窃視症
- 露出症
- 窃触症
- 性的マゾヒズム症
- 性的サディズム症
- 小児性愛症
- フェティシズム症
- 異性装症
細かい説明は割愛しますが、最近では小児性愛や盗撮、痴漢に露出狂、窒息性愛などをただの性癖だという域を超え、妄想だけではすまなくなっているケースの事件が多いですね。
大半は、パラフィリア症と同時に「反社会性パーソナリティ障害」などの精神疾患を持っている場合が多いといいます。
今回のドニーの様に、ひどい性的暴行を受けたことにより精神疾患を発症し、同時にパラフィリア症も。という場合は、薬や行動療法が効果的であるという見解もある様です。
辛さを知っているはずの被害者が加害側になる。こんな事件は決して許してはいけないという社会を作っていけたらと思いますね。
まとめ
かなーり重たいレビューになってしまいましたね。。。
私自身、気軽に観てしまって「あぁ!レビュー一応読んだのに!」と思ったので、より詳しく。どんな心理描写があるのか。をしっかりとレビューしたくて今回紹介させていただきました。
決しておススメはしません。それほどに心理描写がエグくてきついです💦
それでも、このレビューを見ても尚!観てみたい!という方は、是非一度ご覧ください^^



