スタジオジブリによる、宮崎駿監督の10年振りの最新作「君たちはどう生きるか」が、12月8日から、ここ北米で公開開始されましたね^^
日本では、いち早く公開されていたため、レビューしか見る事ができなかったのですが、やっとカナダでも観る事ができますよ✨
この記事では、バンクーバーでの上映情報と、1度しか観てない「評論家でもない私の率直な感想」をご紹介したいと思います。
あくまでも、私個人のただの感想を述べています。事実はどうであるかより、これを観てこう思った!という目線で読んで頂けると嬉しいです^^
北米での英題は「The Boy And The Heron(少年とサギ)」
アメリカの配給会社である「GKIDS Films」によって、上映権を獲得された宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか(The Boy And The Heron)」。
事前に情報を明かさない方針で、あまり予告映像も出回っていないのが特徴ですね。
今か今かと、待ちに待った上映がやーっと発表されて、喜んだ人も多いでしょう^^
アメリカ・カナダでは、2023年12月8日から上映開始、日本語版と英語吹き替え版とどちらも観る事ができる様ですよ^^超話題の新作!! 必見ですね🎞️
カナダでは、Cineplex /Landmark 系で上映中
私の住むここ、バンクーバーでは現在、
- 【Cineplex(シネフレックス)】
- 【Landmark(ランドマーク)】
- 【SilverCity(シルバーシティ)】
で、チケットを購入する事ができます^^ お近くの映画館で、是非調べてみてくださいね^^
<詳しい情報は公式サイトへ👇>
本作品の原作は?
まず、本作品にも出てきた 吉野源三郎氏の著書「君たちはどう生きるか」からタイトルを取ってきたのは間違いないでしょう。(映画内で、主人公:眞人が読んでいる本)
しかし、内容は人類学や哲学、そういったものの見方を、主人公であるコペル君が学んでいく様を描いているものとなっており、戦後の日本でベストセラーとなったこの本は、当時、宮崎駿監督に強い衝撃を与えたと言います。
様々なシーンで、この本の世界観がリンクする事はあっても、原作と言うには、あまりに内容が違いますので、原作という訳ではないようです。
<多くの人に影響を与えた不屈の名作>
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本作品の中で、出てきたこの本以外にも、ファンの間で「内容はこの本とリンクしているのでは?」と囁かれているのが、ジョン・コナリー著「失われたものたちの本」。
第2次世界大戦下のロンドンが舞台のこの作品、確かに類似した部分もありますが、原作というわけではなさそうですね、、。
しかし、どちらの本も宮崎駿監督が「面白い!!」と、多くのメディアで紹介していることから影響を受けているのは間違いなさそうですね^^
初めて観た私の感想
ここからは、完全に私個人のただの感想なので、事実とは何も関係ない事をご了承の上、読み進めてください🙇
この映画を観て、まず、頭に浮かんだのが、
「宮崎駿監督って、幼少期に何かトラウマ的なものがあるのかな?」
という事でした。
何が?と言われても上手く説明ができないのですが、今までの宮崎駿監督の作品とは明らかに違う。
今までは、監督の創り出したファンタジーの世界であったのに対し、本作品は、監督の頭の中を覗いている様な気分になって、少しゾクッとした気がしました。
今までの作品だと、例えば「千と千尋の神隠し」。八百万の神々のための銭湯だったり、竜神様だったりと、神話と哲学を絡めて子供でも観れる作品になっていましたよね。
そして、みんな大好き「となりのトトロ」。こちらも、森の守り神であるトトロと純粋な子供とのファンタジーを美しく描いていました。
森の守り神といえば、「もののけ姫」も忘れてはいけませんよね。この作品では、力強いタッチで、人間の欲望と自然との調和を描いていましたね。
これらに見て取れるように、今までの作品には強いメッセージ性が見えたのに対し、本作品は、どこか「感情の放出」の様に見え、「こう言いたかったのかな。」という感想ではなく、宮崎駿を見た!!という気分でした。
ジブリ作品らしからぬリアルな表現の数々
⚠️少しネタバレがあります!!⚠️
何よりも、印象的だったのが「主人公:眞人 の父が妻の死後、妻の妹と再婚する」という事。そして、時もあけず「すぐに妊娠する」という事。
眞人の母親は、入院中に火事で亡くなってしまうのですが、その僅か1年後くらいで「新しいお母さん」が出てくるんです。このシーンが生々しく、異様なほどによそよそしく、何故この存在が必要なのかを考えざるを得ませんでした。。。
更に、中盤では父親が帰宅するシーンがあるのですが、再婚妻とキスをしている所を眞人が盗み見してしまうんです。「ジブリなのに」です。
今までのジブリ作品は、そういった人間の生々しさは描写されてきませんでした。そこが良かったし、子供にも見せたいアニメだったはず。
しかし、本作品では「あえて」そこを見せてきた。「うわっ」と思ってしまう、「痛み」を表現している事が印象的でした。
主人公・眞人に重ねてみえる宮崎駿監督
今まで、ジブリ作品を「好きだ好きだ」といいながらも、宮崎駿監督に対しての興味はありませんでした。(凄い監督という意識しかなかった💦)
しかし、本作品を観て何故か、初めて「宮崎駿監督を知りたい」と思ったのです。
本作品で出てきた眞人の父親は、戦闘機の工場を経営しており、この時代ではとても裕福な環境である事が描かれています。
そんな父親は、やや傲慢で、成金主義らしく「問題はお金で解決する」ような人間であるという描写があります。
宮崎駿監督も、実際は、叔父が航空機を作る「宮崎航空興学」の社長であり、父親はその工場の工場長でありました。
戦争に使われていた戦闘機のパーツ製造を行っていたため、戦時中でありながら裕福な暮らしを送っていた宮崎駿。罪の意識を感じ、強い葛藤があったといいます。
実際の、監督の父親がどういった人だったかは、監督本人の証言しかないので憶測になりますが、幼い宮崎駿から見た父は、「戦争に加担した」という事に罪の意識を持たない人物であったことが語られています。
また、裕福なためか、女遊びが激しい人だった。とも宮崎駿本人から語られています。
半藤:そうすると、工場を大きくしてから拠点を鹿沼に移したということですか。
宮崎:ええ、それが昭和十八年(一九四三)か十九年のことだったようです。つくればつくるほど金になるから、ソレヤレッっていうんで大きくしていったのでしょう。伯父はあるときから胸を病んで療養生活をしていたものですから、工場はもっぱら親父が切り回すようになっていました。戦時中がいちばん経済的に潤っていたと思います。銀行から金借りて増資して、増築して、それで戦争が終わったんですよね。大局観を全然持とうとしない人間でした。
半藤:お父さん、おいくつだったんですか?
宮崎:ぼくの親父は終戦の年に三十一歳でした。戦争はずっと続くもんだとばかり思って手を拡げていったそうです。昭和二十年(一九四五)にもなれば、知り合いの軍人も含めて、もうまわりじゅうが「この戦争は負けだよ」といっていたのに。
出典:「腰抜け愛国談義」/文集文庫 2013
軍需産業の一翼を担ったことについても、不良品をつくったことについても、戦後になって罪の意識は何もなかったですね。要するに、戦争なんて、バカがやることだ。でも、どうせやるなら金儲けしちゃえ、と。大義名分とか、国家の運命とかには全く関心がない。一家がどう生きていくか、それだけだった。
出典:「出発点ー1979~1996」/徳間書店 1996
本作品中に、いじめっ子にやられたといって、実際は自分で付けた傷があるのですが、この眞人が監督本人を象徴しているとしたら、そんな葛藤に対する自傷行為に見えてなりませんでした。
もう一つ、監督がよくお話される記憶があるのですが、
私と六歳の兄はガード下の排水溝に足を入れて座り、その上に布団と畳まで立てかけられました。暑くて苦しくて、本当にあの時、自分はあのまま家を失うか、死んでいたのではないかと、時々思い出します。
ようやく布団と畳の重圧から解放されて、トラックの荷台に父と兄とで乗りました。その時に「乗せてください!」と駆け寄った、母親と幼い女の子を置いて逃げたという記憶は、長い間、私を苦しめました。
出典:「夢と狂気の王国」/2013
この、何気なく語ったであろう監督の記憶ですが、長い間苦しめたというこの記憶は、絶対的な存在の父親に対する、不信感や怒り、自分に対する罪悪感によってトラウマとなっていた事でしょう。
幼少期の親に対する不信感やトラウマ。これってかなり長い間自身の思考にまとわりついてくるんですよね。。
小さなトゲが刺さっている感覚。特にこれと言った感情はない。悲観しているわけでもない。でもモヤモヤが残る。浄化されない。そんな感じ。(皆少なからずあるのでは?)
宮崎駿監督の今までの作品は、
「こうあったらいいのに、こうありたかった」
が映し出されていたのに対し、本作品は
「実際はこうだ。こう生きてきた。しかしそれが人間であり、善悪は自分の中にある」
といった、哲学的な作品だな。と感じました。
今までとは違う!作品を観た後の消化不良感
今までのジブリ作品って、「よく分からない」と思っても、観た後はなんだかスッキリするような、それぞれの解釈で観て楽しめる、そんな作品が多かったように思います。
しかし、「君たちはどう生きるか」は消化不良感がスゴイ。ただただこの題名通り、
「私はこう生きてきた。さぁ、君たちはどう生きるか?」
と問われている様な、着地点の無い悪を見せられて終わった様な、そんな感じすらしてしまいます。
哲学の永遠のテーマである「善悪」。
きっと、幼少期の宮崎駿にとって、悪に見えた父の行為も、その時代背景では善なのかもしれないし、作品中に「あんたなんか大嫌い!」と叫ぶ継母も、悪ではないのかもしれない。
こうしてみると、この作品は「宮崎駿の集大成」と言えるのかもしれないですね。